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転生王女と赤い薔薇(The Spell of VELSAMORE)

歯車庶民の王女転生譚。そして世界の神に……

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更新停滞すみません。

活動報告

おはこんばんちは。
かろうじて生きてますが、アップデートはされていません。転生王女がまったくといってよいほど、進捗なしです。繁忙期を挟み、忘れてました。
滅びの王子の方は、なろうで50話以上書いてます。あらすじを読んで興味を持たれた方は是非ご覧ください。
キーワード:第二王子 幼女 ロマンス ファンタジー R15
http://ncode.syosetu.com/n0888ci/
※キーワードはあれですが、かなり真面目に書いているものです。

活動報告的なもの
①フリーバトン
1. アイディアはどんな場所でどのように出してる?
ベッド、喫茶店、公園、洋館
心のスケッチブックに静止画を、脳裏の前頭葉フィルムと耳に当てて聴こえる潮騒の貝殻で音声動画を再現。

2. 僅かなひと時を過ごすのにおススメの場所は?
トイレ(洋式)

3. 物語のストーリーを決めるのにどれだけ時間をかけています?
骨子と肉付けで全然違う。テーマ的なものはすぐ決める。ロリコン王子の悲劇とか。

4. なろうに入って今まで一番嬉しかった出来事は?
1日のアクセスが200超えた何日か。数字はわかりやすい。

5. 逆に悲しかった事と辛かった事は?
リアル。諸行無常の鐘の音。
長期連載でアクセスが伸び悩む。

6. あなたの目標は?
自分と愛読者のために、本を自費出版(笑)
まあ、せいぜい20冊程度かな。金かけて豪華なものを作る。

7. 今自分が書いてる作品はどんな理由で書いていますか?
これはもう最初に断ってあるが、
私の小説は、妄想の延長で、経緯の補完、かつ備忘録である。

8. 今自分が書いてる作品のおススメの話は?
アムンセルとリィが伯母の家に遊びに行く話。

9. コラボしてみたい他の作品のキャラクターは?
コラボとか恐れ多い。
しかも、自分はハイファンタジー書く癖に、読むジャンルが違うので、コラボしたら世界壊れる。

10. このバトン、誰に回しますか?
バトンではないので、回すも何もない。拾得物扱いです。

②いつ更新するのか?
1ヶ月以内には、多分転生王女を更新します。それと、以前作ったプロットのものを文章に起こしているので、そのうち載せます。

③コメント
死んだんじゃないかとか、ご心配かけてすみません。青息吐息(ぜえはあ)ですが、地獄(インフェルノ)でもなかなかしぶとく生きてます。ただ、精神にダメージがあると、創作のゆとりがなくなります。肉体も精神も健康であるのは大変です。
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+37+ 化け物たちの齢

転生王女と赤い薔薇

「ここからは私が話しましょう」
 年長者のジュナイは薄く笑って立ち上がると、キッチンに歩いていった。消えかかっていた蝋燭の炎を移すため、新たな蝋燭を持ってきたのだ。彼はそれに火を灯した。
「我が祖が亡くなってから、もう千年近く経ちました。奇跡的に私達は呪われた命のバトンを繋いできましたが、今度こそお終いです。それほど、深刻な問題が起こっているのです」
「深刻な問題?」
「ええ。ヘレシー間には、もともと多くの奇形が生まれておりました。その奇形種のほとんどは生後まもなく死んでしまい、出生数にも含まれません。しかし今、健康体であるはずの我々の体が弱体化していることに加え、半分近い高確率でゼイガーという変異種が生まれてしまう現象が起こっています。変異種ゼイガーは筋肉質ですが、前頭葉の発達が悪く、従順で扱い易い家畜のような存在です。お嬢が散歩の途中に畑で見た通り、彼らは農作業に従事しています。正常なヘレシー、いや正常というのはおかしな話ですけれども、我々ヘレシーは減り続け、ゼイガーは増えているのです」
「このままいくと、どうなるの?」
「近いうちに、ヘレシーもゼイガーもいなくなるでしょうね。このままだと、我々は間違いなく絶滅します」
 四人の間に流れていた空気が急に凍えて、氷点下になったように感じた。スクイナフがびくんと体を強張らせ、私を射抜くように見つめている。憎悪の念を感じるわ。一方のサイザールは私から顔を逸らして、花瓶からケイトウの花を抜いてじっと眺めているし、ジュナイは作ったような笑みを貼り付けたまま、機械的に話している。
 ああ、私がこの世界を作った原作者だと知れたら、間違いなく嬲(なぶ)り殺しにされそうだわ。ミラクルハードモードなんですもの。何とかしてあげたいけど、いくつか小説と異なる展開もあるし、あらすじを知っている私にとっても罠(トラップ)が仕掛けてあるから、慎重にいかないと。一体、この世界はどうなっているのよ。神がいると仮定したら、原作者の私が死んで、誰が駒を動かしているというのかしら。

「ゼイガーには生殖能力が無い。我々の寿命は短い……」
 長い沈黙の後、サイザールがため息をついて呟いた。そして、ようやく私に目を合わせてくれた。
「二十年も生きられないと、ジュナイに聞いたわ。それは本当?」
「二十年生きたら、天寿を全うしたと称えられるくらいだ。我々の命はそれほど儚い」
「お嬢。私達は何歳に見えます?」ジュナイは、リビングの壁沿いをくるくる回りながら質問した。
「人間で言えば、二十代前半から三十手前くらいかしら」体つきはね。ジュナイとスクイナフの精神年齢は見た目より一回り幼そうだけど。
「そうですね。しかし、我々の年の取り方は人間のそれとは違います。スクイナフ、君は何歳かね」
「俺は十一歳だ」
「スクイナフはサイザールより一つ年下です。ということは、彼は十二歳です」
「そう。船長と同い年……」
「で、私はグラナトの一つ上ですので、十三歳です。ビックリしましたか?」
 これには、事情を知っている私も驚きを隠せなかったわ。実年齢と外見があまりに違うのだもの。スクイナフが十一歳って、本来ならばシャインくらいの可愛い年頃じゃないの。それが、十六歳のお姉さまに向かって、バカだのクソアマだのウンコだの、生意気の度を超えていますわ。まあでも、見た目が、というか骨格がもう大人の体だしねえ。
 レッドローズなんて、海賊仕込みの浅黒い体で筋肉隆々。さっき見たときなんか病床で剃れなかったのか、頬髭が生えていたし、野性的な顔には日に焼けて出来た細かいしみと私には決して見せないだろう笑いジワがついている。二十代後半の肉体は、そのどこにも少年らしいあどけなさを残してはいない。
「私達の体は、度重なる近親相姦の末に異変をきたしております。奇形や変異体が生まれること然り、我々自体も一定の方向に退化してゆきました。つまり、生存し、生殖する能力のある我々ヘレシーがその機能を残しながら、といっても残念ながらその機能さえも減っていく運命にあるのですが、退化していくのです」
「近親姦による退化?」
「そうです。ゼイガーの誕生と我々の寿命の縮小。これが意味するところはなにか?二人の父娘から発し、他の誰とも混じることのなかった孤独な遺伝子は、性質を変え役割分担するよう分化したのではないかと、考える説が主流です。すなわち、思考力と生殖力は無いが労働には適していて永く生きられるゼイガーと、人間のように思考を持って生きられるが寿命が短いヘレシーとに、遺伝子が変異したのです。そして、寿命の縮まった我々は、繁殖期の繰り下げで成長が非常に早くなったというわけです」
「信じられないわ。あなたが十三歳で、レッドローズが十二歳?あの体で、あたしよりも四つも年下なの?」
 私は小説内のヒロインとはまた違う気持ちで、彼らの体をまじまじと見つめて、感嘆して言った。この時、前世の小説では、船長がヒロインと一対一で説明をしていて、ヒロインの同じような台詞に対し、船長は
>くっつくほどに彼女に顔を近づけて、大きな手で力強く彼女の細い手首を掴み、
>彼女は彼の熱い大きな手に握られて、思わず小さな悲鳴をあげる。
>「生まれてから十二年と言うだけだ。精神も、体と同じように早く成長する」
と怒ったように言うのだけど、今は布団の中。代わりに、スクイナフがチッと舌打ちをしたわ。そういう人間の驚嘆は今に始まったことじゃないみたい。それもそうよね。お隣にブレイブタウンというヘレシー生体の研究機関もあるわけだし、私も彼らにとって想像通りの反応をしただけ。
「船長と俺は、人間で言えば二十六、七くらいだろうね。仲間も皆すぐに成人になる。そりゃ人間達から見れば、化け物だろう」
 サイザールは、腕を組みながら少し唸るように言った。その手にはケイトウの花が握られている。
「これは君が挿したのかい?」
「そうよ。ジュナイと散歩していて、道端に咲いているそれに目が留まったの。あなた方の髪の毛のように美しかったものだから」私はすました顔をしてそう言ったわ。よく赤ペンキを被ったような髪って例えていたけれど、悪くない色だもの。
「ふん。ご機嫌取りか?命乞いか?俺たちがどれだけお前ら人間を憎悪しているかわかって、急に怖くなったか?」と、言いかけるスクイナフに手で静止するサイザール。私の顔を見入って言った。
「オリビア、君は花が好きなんだね。花畑には行った?」
「いいえ。あなたが連れて行ってくれるだろうと、ジュナイが」
 そばでうろうろしていたジュナイは、急に振り返って首を横にぶんぶん振った。いいから、ちょっと黙ってて。レッドローズと散策するよか、サイザールの方がましだもの。たとえ、女たらしでも彼は暴力を振るわないし。レッドローズとは何を話せばいいのかも、浮かばないわ。サイザールはにこりと笑った。

+36+ 待ち受ける試練

転生王女と赤い薔薇

「いつの日か見世物にも飽きてしまうと、王国の人間は呆れたことに、彼らに食事を与えるのも忘れるようになった。そこで、飢えたヘレシー達は隙を見計らい、今まで隠していた巫術(ふじゅつ)を使って命からがら脱獄(だつごく)したのだ。男女のペアに別れて散り散りに逃げたのさ。しかし、ペルセウスに残って身を潜めていた者達は、魔法戦士団に捕まってしまった。逃亡中に人を負傷させたかどで裁判も無く処刑された者以外は、悉(ことごと)く檻(おり)に戻されたが、まもなく全員が疫病(えきびょう)で死んだ」
「ベイスンに辿り着いたヘレシーは、その時海に出た人達だったのね」
「そう。二組の男女が商船に乗り込むことができた。いわゆる密航さ。それは、開拓途上の“勇者街(ブレイブタウン)”、それから海を隔てて南にある“竜鉱山(ダイナスマイン)”に資材を届けに行く船だった。だが、航海の途中、やはり彼らがヘレシーの化け物だということが発覚し、船長にすぐさま船から下りろといわれて、そしてあろうことか五百年前の屈辱(くつじょく)を繰り返した。彼らは乗組員に追い立てられて、海に突き落とされたのだ」
オ「……」
ス「……」
サ「……」
ス「なんか言えよウンコ」
オ「はあ?」ふざけんなクズイナフ。
ジ「それで、無事だったのですか?」
 わっ。いつの間にか、ジュナイが戻ってきていた。私の隣に座って、興味津々に炎の揺らぎを見つめているじゃないの。そして、私が言うべき台詞を代わりに言ってくれた。口真似までしてくれて、本当にうざい。
「ジュナイ。グラナトの様子は?」サイザールが怪訝な顔をして問う。
「すやすや眠っています。熱も下がりました」
「良かった。姫のおかげだ」ほっと胸をなでおろすサイザールに、
「いいから、続けてくんろ?」と返す、目を潤ませている、なんだかなーのジュナイ。
 私も目に涙でも浮かべて小刻みに震えていた方がいいのかしら。

「ここからは俺が話してやる。俺たちの先祖がどうやってヘレシーベイスンにたどり着いたかをな」
 余計なことを喋らないための監視男がしゃしゃりでて話し始めた。
「彼らが船から海に突き落とされた後、商船は嵐に遭(あ)って転覆(てんぷく)した。二人のヘレシーが浜辺で意識を取り戻した時、沈没した商船に乗っていた船長以下数人の乗組員どもが同じように砂浜に打ち上げられていた。ヘレシーは、その時容赦なく彼らの首を絞めて全員を殺害した」
「……」
「そこ、驚いて目をかっ開くところですよ」と、ジュナイ。
 通常のオリビアならね。両手で口を覆って、恐怖の眼差しでクズイナフを見ていたでしょうよ。私も臨場感を出すために、目ン玉ひん剥(む)いてみる。
「あまりやりすぎると、落ちちゃいますよ(目玉が)」
 ジュナイがさりげなく耳打ちで忠告するも、サイザールはすでにひいている。ああ、ちょっとホラー映画のフランス人形みたいになっちゃったかな?白髪だし、怖いよね。
「お前は今、奴らを殺すこともなかったんじゃないか?と思ったか。いいか、彼らは船から突き落とされたんだぜ?一緒に船に乗り込んだ二人の仲間は溺(おぼ)れて行方知れずだ。後には同父同母の兄妹しか残らなかった。同士を亡くした怒りと嘆きに報いて奴らを殺したのだ」
「確かに。殺して当然だわ」
 私の大切なエドガーお兄様がもしも暗殺されたら、怪物を追いかけるヴィクター・フランケンシュタインの如く、犯人を地の果てまで追いつめて見せるわ。そして、デス・クリムゾン(笑)で闇へと葬り去る。それが報復というものよ。
「バカのくせに物わかりがよいな。だが、こちらの状況は一向に良くない」
「バカは余計よ!」
 スクイナフはため息をついて、再び語りだす。知性のかけらも感じないが、憂(うれ)いに沈んだ顔だ。
「兄妹は、ダイナスマインからブレイブタウンに渡り、険しい山脈を越えて高原地帯に至った。そして、湿地の少ない石灰岩質の土地、つまり今のヘレシーベイスンに住み着いた。彼らは人間達を恐れ、二度と人里(ひとざと)に姿を現わさなかったが、我が祖の遺志のために子供を作り育てた。そのようなことが幾世代にも続き、閉ざされた社会の中で我々は再び増えた。しかしながら、自ら船を作り世界に出て行った頃には、我々は人間から派生した史上最悪の化け物とみなされていた。すなわち、絶滅したとされているものの、人間との結婚を禁ずる法律が出来ていた。近親交配というタブーを犯し続けてきた我々との間に子供を作ると、人間の尊厳が汚されると。悪い種が増えていくというのだ」
 スクイナフは、ここまで言うと首を横に振って、ソファーに深く凭れてしまった。その先を語るのが嫌になってしまったのだろう。わかるわ、その気持ち。原作者だけに。私もため息をつきたいくらいだもの。
 ジュナイがスクイナフの顔にかかった長い前髪をかき上げようとするが、うざったがってその手を払い、そっぽを向いた。私には、彼の暗澹たる思いが背中を通して伝わってきたわ。拒絶されたピエロの寂しそうな笑みが炎に仄明るく照らされている。誰も彼も語るのをやめてしまった。
 真向いに座っているサイザールを見やる。彼は何か別のことを考えている風だったが、私の視線に気づくとふと紅茶に目を落とした。
「そう……ここからが大事な話なんだ。過去の話以上に」彼は小さく呟いた。

+35+ 裏切られた異端

転生王女と赤い薔薇

 と、しばし沈黙があり、スクイナフが口を挟んだ。
「余談だが、それからさらに半世紀後、再び訪れた地理班研究者は、ヘルスカルアイルの土地が大火(たいか)で焼け野原になっているのを発見した。そこはただ塵芥(じんかい)の海、何一つ残っていなかったんだぜ。骨の欠片すらも。焦土(しょうど)と化した原因は不明だが、おそらくヘレシーを憎む魔法使い連中がやったんだろうと、俺は考えている」
「そんな……どうして」
 何一つメリットのないことをペルセウスの魔道士たちがやるかしら。脱出の見込みのない人々を殺戮したりする?焼き滅ぼさなければならないほど、ひどい惨状だったというのかしら。
「言っただろう。あんたら人間と我々は、憎みあっている。我が祖を船から突き落としたヴェルサーモロの子孫が、今なお恨みを募らせている我が祖の複製のような化け物をそのままに残しておくわけがない。飛空挺(ひくうてい)で運ばれた十人の男女が、その後どうなったか知っているか?」
 ああ、自分のこと化け物って言ったよ。この人。自覚あるんだ、と私は感慨深く思った。ゼイガーはともかく外見に関しては、髪色と瞳以外は普通の人のようにも見えるのにね。まあ、スクイナフは例外なく悪魔だけど。
「……当時の風刺画なら見たことがあるわ」
 活版印刷による本の挿絵で四色刷りのカラー版画だったので、ヘレシーの赤毛が際立っていたのを覚えている。それが話を聞くうちに繋がってきた。街中に設置された大きな檻の中で、奇異な人相のヘレシーがうろつき、民衆の見世物にされている絵だった。
 スクイナフが肩をいからせ何か言おうとしたが、それを遮るように、サイザールが話に割って入った。
「船上では、彼らはライラの孫娘の公爵令嬢に謁見するという約束になっていたらしいのだけど、ここでもまた裏切られてしまった。ペルセウスに着くと、ライラは亡くなっていて、彼らを待っていたのは市井(しせい)の見世物(みせもの)小屋だったのさ。“絶海の孤島に流された漂流者の子孫、近親姦(きんしんかん)を繰り返して繁栄”、そんなタイトルで巷(ちまた)をにぎわせ、人々は興味津々に檻の中の化け物を飽きるまで眺めた。彼らは、化け物に異端(ヘレシー)と名づけ、餌付けして踊りを躍らせ、肉欲のままに男が同じ檻の中にいる近親の女を犯すのを見ては楽しんでいた。風刺画も残っているくらいだ」
「飢えていたからとはいえ、俺たちの先祖がそんなことをしていたとは、考えたくないがね」
「君の言う通りだ、スクイナフ。知性ある我々が民衆の面前で痴態(ちたい)を晒すはずがない。誇張して書かれていることもあるにはあるだろう。ヘレシー側には文献が残ってないからな。だが、口伝でもひどい有様だと伝わっていた。絶海の孤島に負けず劣らず……」
 サイザールの悲しそうな顔に、私も目を向けられなくなってしまった。
 なぜならば、ペルセウス王国の姫君である私は、ヘレシーの“我が祖”と共に世界を救った魔道士ヴェルサーモロの子孫だから。というよりも、こんな想像するだに恐ろしく悲惨な目にあわせた人間、すなわち登場人物の運命を翻弄(ほんろう)しまくり、チェスの駒のように操る神というべき原作者こそ、前世の私であるということに戦慄(せんりつ)した。レッドローズやスクイナフは憎たらしいけど、この集落全体のことを考えたら憐憫(れんびん)の情を禁じ得ないわ。と、申し訳なさに俯く私に
「おい。寝るんじゃねーぞ。クソアマ」
 スクイナフが罵声を浴びせる。オリビアはバカからクソアマにランクアップ(?)した。
「寝てませんけど!バカイナフ」
「バ……バカイナフ!?なんだと」
 奴の首を絞めて、頸動脈(けいどうみゃく)を噛み千切ってやりたい。こんなことになるなら、家庭教師に最凶の黒魔法“デス・クリムゾン”を教えてもらうんだった。いかにも中二病ちっくな名前ね。
「まあまあ、落ち着いて……」
 サイザールが間に入って宥(なだ)める。彼がいなかったら、飛びかかって揉みあいになっていたわ。
「まだ先が続くんだから……」
 はい、サイザールの言う通り。話は続くのです。明日はお昼過ぎまで寝ているようかしら。

+34+ 奇妙な三者面談

転生王女と赤い薔薇

 話し手は、ジュナイからサイザールに代わった。そして、ジュナイはレッドローズの様子を見に寝室へ行ったきり戻ってこない。前世の小説から、二人は出来ているとも噂される間柄だったが、実際はどうなんだろう。……。一方、リビングではこれから奇妙な三者面談が始まろうとしている。
「まあ、この先長そうだし、粗茶(そちゃ)ですが。どうぞ」私はお茶を振舞っていった。
「ああ、ありがとう。気が利くね、ミス・オリビア」
 クラッカーを頬張りながら、紅茶の香りに心地よさげなサイザール。
「ミスは付けなくていいわ。サイザール」私は彼と笑いあう。
「サンキュー」と、スクイナフが横槍を入れてくる。軽口よね、この男。身の程をわきまえなさい。
 ずずずず……(音立てんなよ、バカイナフ)
「なかなか良いお手前だね。美味しかったよ、オリビア」
 本当に女性の扱いが上手なんだから、サイザールは。妹のシンシアもそうだけど、二人は完全無欠な感じがするのよね。
「け。豚もおだてりゃ木に登るってか」
 対してスクイナフは、シャインとノイザという可愛らしい弟妹(ショタロリ)がいるのに、なんでこんなに性格が悪いのかしら。
「おい!くそ不味い茶の口直しにクラッカーのお代わりをよこせ!」
 ……。今に見てなさいよ。口もきけなくしてやるから。私は、クラッカーの皿ごと彼に差し出したが、だんまりを決め込んだ。

「さて、では続きを話そうか。ヘルスカルアイランドに我が祖と彼の娘が漂着したところだったね。我が祖は悲しいかな死病(しびょう)を患(わずら)っていて、先が長くないことを知っていた。娘を一人残すのは不憫(ふびん)に思い、島内に人がいないか探しに行かせたのだ。しかし、誰もいなかった……」
「そこまでは聞いたわ」
「その後、詳細な経緯はわからないが、父娘(おやこ)で夫婦となったのだよ」
「……」
「脱出する方法のないまま、彼らは子供を作った。しかし、その子が生まれる前に我が祖は亡くなった。ヴェルサーモロに裏切られた憤怒(ふんぬ)で熱病に罹り、恨み言を吐きながら、無念のうちに逝った、と言われている」
 本当にヴェルサーモロが突き落としたのかはわからないけど、決めつけにかかっているのはサイザールだけではないだろう。きっと多くのヘレシーがそう信じている。
「子供は一人、男の子だった。娘はその子が育つまで待ち、そして年端もいかない少年を男にして、また孕(はら)んだ。我が祖の血を絶やさないためにね。母と息子の間には、数人の子供が生まれた。その後も兄弟や近親で結ばれていったのだよ」
「……なるほど。それで、皆さんの髪は同じように赤いのね。きっと、我が祖という方の髪と瞳も真っ赤で、あなた方にそっくりなのね」
 サイザールは頷(うなず)く代わりに自分の髪をかき上げた。美しい額が炎に照らされる。隣でスクイナフが我慢ならないような面持ちをしているが、この二人の容姿も兄弟のようによく似ているのよね。性格は全然違うけど。
「で、今ここにいらっしゃるということは、そのヘルなんちゃらとかいう島からは脱出できたのでしょう?」
 ヘレシーベイスンは、ペルセウス王国のあるペガシス大陸の西に位置し、南北に長く伸びるドラコ大陸の湾曲した横腹の中部にある。不便な土地だが、絶海の孤島ほどではない。ここに我が祖の子孫である彼らが生活しているということは、ある時点に島を脱出して、この土地に移住できたということだ。
「おっしゃるとおり。脱出の機会は、我が祖が亡くなってからおよそ五百年後に訪れた。事の発端は、ペガスス大陸で起こった産業革命さ。魔法の力が機動力に応用されるようになり、空を飛ぶ船の生産が始まったのだ。ペルセウスの魔法地理班が、世界図を作るために飛空挺(ひくうてい)で世界を飛び回っていた時代だ」
「魔道士ヴェルサーモロの子孫で初代魔法戦士隊長を務めたライラ・アンジェラスが、ババアになって辛うじて生きていた頃だな」と、スクイナフが補足した。
「左様。飛空旅行がブームとなる一足先に、国王から未踏の地へ探検する命を受けた優秀な地理班は、ヘルスカルアイランドで私達の憐(あわ)れな祖先を発見したのだよ。彼ら地理班は助けてくれと懇願する三百人あまりのヘレシー達のうち、まるで植物の採集でもするかのように、健康体の男女五組、計十人しか連れて帰らなかった。記録によれば、残された者のほとんどは奇形だったというのだけど……」
「……」
 五百年余り近親交配を続けてきたというのもすごい話だが、遺伝的異常がどの程度だったのかは、いくら原作者でも知りようがないわね。とにかく設定がハードすぎる。

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