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転生王女と赤い薔薇

+6+ 闇を走る少年

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 城内の中庭は、秋に咲くバラの香りに、嵐の到来を待つ黒土の独特なにおいが呼応していた。
 月が中天に差し掛かった頃、庭に面した長い廊下を走る小柄な影があった。短剣を握りしめた手は、わずかに震えている。
 その影は食堂と台所を回り、裏手の庭に出た。腰を屈めバラの園を掻き分けながら、城壁へと駆けていく。そして、槍を肩に掛け見回りをしていた門番を後ろから襲いかかった。
ガツッ
 後頭部を剣柄で殴った。うめき声ひとつ立てさせず、男を地面に転がすと、城門に手をかける。幅の狭い裏口であるが、裏門の高さは城壁と変わらない。重たいかんぬきを手前に引きよせ、扉をゆっくりと押す。反対側より引く力があり、扉はいびつな音を立てながら開放された。
「船長……」
 少年は、扉の外で待っていた男を見上げた。頭部と口元を麻布で巻き隠し、目だけが光っている。勇気と決意と、それから苦悩と憂いが入り混じった陰のある双眸。それは闇の中で全ての色を吸収し、黒々と大きく輝いていた。

 男は無言のまま、扉に立ち竦み顔を窺う少年の脇を通り過ぎ、振り向かずに言った。
「よくやった、シャイン。船に戻って待っていろ。俺が戻り次第、出航する」
「はい!」褒められて少年は素直に喜んだ。
「そこのロバは俺が使う。お前は徒歩で帰れ」
 少年は肯く。自分は、先の襲撃の隙を突いて侍女に紛れ城内に潜り込み、裏門を開けただけ。略奪するのは、船長自身なのだから。
 彼にはこれから奪うものを乗せるロバが必要だ。そのロバは、城壁に突き出た杭に縄でつながれている。船長は城に入って探索し、何かを奪うはずだ。
 ――だが、何を?
 このことを知らないのは、少年ばかりではなかった。船に待機しているクルーのほとんどは、船長の目的を何も知らずに待っているのだ。
 ――今回の船旅は異様。
 少年は海賊として海に出るのはまだ三回目ではあったが、そう感じた。
 彼のみならず、経験の長いクルー達も異様に感じている。船長は、あきらかに今までと違うことを思案し、誰にも相談せずに苦悩し、それが為に心身ともに疲れきっているように見えた。船長はなぜか城下に長くとどまり、船に戻ろうとしなかった。他のクルー達は、船長の指示通りに、他の町や村の有力者から略奪をして戻ってきた。
「船長」少年はかすれた声で呼んだ。男はゆっくり振り向いた。
「いつ戻られますか?」
 恐る恐る聞く少年の強く握り締めた拳は、彼の目に射られてすこぶる震えた。
「明け方までには戻ってくる」
 男は、静かに建物に消えていった。
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