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転生王女と赤い薔薇

+8+ 熱烈な好敵手

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 城に潜入した男は、懐から丸めた紙を取り出し、さっと広げた。それは城の内部が各階ごとに書かれた地図だった。どこに何があるとは書いていないが、大体の見当はついているようだ。
 男は中庭を突っ切り、明かりの灯った部屋を静かに通り過ぎて、蓮の池の奥にある尖塔に向かって音もなく走っていった。

 王の執務室は夜が更けてなお明るく、ペルセウス王エドガーは報告を受けている最中だった。いつになったら自分を休ませてくれるのだと、彼はいらだたしかった。近衛兵第二師団長ケイプと自警団長ヴァレルが、彼の睡眠に浴する時間を削っているのだ。
「そのことはもういい。君の上司のシルバーに伝えておけば結構だ」エドガーは手を振った。
「そうはいきません!」ヴァレルはきっぱりと断じた。
「トランスキ隊長は、現在休暇中でブレイブタウンに里帰りしています。戻られるのは一週間後!」ケイプもヴァレルに調子を合わせたように勢いづいて説明する。
「ふうん……」どうでも良さそうにエドガーは首を振ったが、少し経って興味を持った。
「あいつの故郷はブレイブか。なかなか面白いところに住んでいるのだな」
 椅子に深く腰掛けた王は、腕を組んで二人を見据えた。二人ともいつになく良い目をしている。シルバー(あいつ)がいないせいか?彼らが悪魔(デビル)なら、やつは親玉(サタン)だ。
「は!やつらの住処とは険しい山脈を挟んで隣り合わせ!」ヴァレルは唸るように答えた。
「ヘレシーベイスンか。化け物どもを見張っておく打ち上げ花火のようなものがあると聞いたぞ」
「正確には気球です!」ヴァレルは自信を持って答えた。幼い息子を勇者に育てようと、彼は一度だけブレイブタウンに訪れてそれを見たからだ。ケイプは横目でヴァレルを睨んだ。
「ブレイブタウンは、五百年ほど前に、彼らを監視し、彼らの侵略から世界を防衛する第一拠点としての目的を持って作られた町でございます!」負けじと説明するケイプに、今度はヴァレルが舌打ちする番だった。
「それはよいが、奴らのアジトで、首領……レッドローズとやらを捕らえる。もしくは、奴が海で荒くれている間に、化け物どもの里を殲滅させることは出来ないのか」エドガーは面倒くさそうに、二人に訊いた。そんなことが出来るなら、もうとうにやっているだろうが。
「現在、村に奴はいないようです。近頃はヘレシーによる各地の襲撃にも彼の姿を目撃した者はいないようですが」とヴァレル。
「ヘレシーベイスンへの進入経路は、空からの経路と、山脈からの経路があります。陸路となると、人一人通れるくらいの険しい坂のトンネルと切通ししかありません。我々が知っている道のほかにいくつかあり、それは奴らの避難経路になっているようですが、入り組んでいて攻撃するには大変な不利です。偵察もやっとなのですから……。空の経路は」王はケイプの言葉をさえぎった。
「そんな辺鄙な高地に住まうヘレシーは、見るも貧しい不便な生活を送っているのだろうな」
「ごもっとも!ヘレシーベイスンには石灰の痩せた台地が広がり、そこに無数の穴を掘って、もぐらのように暮らしています。食べるものと言ったら、干からびた草の根っこくらいでしょう。くそ忌々しい、しぶといやつらです!」
「ブレイブタウンのヘレシー生態研究機関によれば、彼らがいくら海賊行為を行って財宝を手に入れようと、人間とは一切の交わりを持たないため、その富を使うことが出来ないと言われています。何のために金銀を集めているのやら、理解不能です。一説には、義賊になりきって、領主達が領民から不当に搾取した税や金銀を略奪し、民のもとに返すことで信用を得ようとしているのではないかとも!」
「ぐぐぐぐぐ」
「にぎぎぎぎ」
双方の目から火花が散った。これが好敵手(ライバル)というやつか。
「ほう、なかなか詳しいのだな、ケイプに、ヴァレルも」
 王は欠伸をこらえながら、感心した風に呟いた。
「「はい!お褒めに預かり光栄至極に存じます!」」
「結構なことだ。では、このことはお前達に任せることにする」
 寝室に下がろうとしたエドガーに、ケイプは後ろから必死に声を掛けた。
「お待ちください!陛下!先ほど、いえ、昨晩姫を襲おうとした集団は、あれはヘレシーです。絶対に。姫があの後「赤い瞳」とおっしゃったのを侍女の一人が聞いたと申したのでございます。そこにレッドローズがいたかはわかりませんが、素性を隠したオリビア様を襲うなんて、計画的過ぎます」
「で、お前達は、妹がロバの群れにいたとは露も知らず、襲撃未遂後に調べもせず釈放したわけか。城まで護衛することも無く……。もしかしたら、ロバに乗っていた方こそヘレシーだったかもしれないのだぞ」
 王は振り向きざまに言った。もう睡眠は諦めなくてはならないのか?という残念顔だ。
「それは、……不覚でした。面目次第もございません。言い訳のしようも」二人の家臣は語気を改め、慌てて下を向く。姫の変装だったのを知ったのは、無論彼らが城に戻った後だった。
「言い訳なら山のように出来よう。ロバが汚い鼻の頭を擦り付けてきただの、異様な臭いを群れが発していただの。しかし、あれが姫の香水だ」
 オリビアは城から出るとき、大抵高貴な匂いを消していく。お忍びとしては仕方の無いことだ。「お忍びの闊歩」などとからかったこともあったけれども、もっとおしとやかになれないものだろうか、毎度毎度一体何をやらかしているのだろうか、エドガーはため息をついた。
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