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転生王女と赤い薔薇

+10+ 謎の無重力空間

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 カタカタカタ……
 カタカタカタ……
 闇に一つ白い四角い窓が浮かんでいて、光が四方に均等に散っている。その前に誰かが座って、カタカタと何かをたたいている。

>――魔法大国の王女が、
 カタカタカタ……
>赤い髪を持つ異端の海賊に攫われた。
 カタカタカタ……
>彼女を人質として、海賊達が望む条件とは……。
 カタカタカタ……
>――タブーを犯し、命を繋ぐしかできなかった呪われた海賊達の、最後の冒険譚。
 カタカタカタ……

「あらすじは、こんなもんでいいかしら」聞き覚えのある声に、ため息。


 私は、はっと目を覚ました。あまりよく寝付けなかった。というか、変な夢を見たわ。
「あれはノートパソコン」と棒読みで呟きながら起き上がると、再び机に向かい椅子に座った。
 明かりをつけると、錠つき引き出しを開けて本を取り出した。読みかけの分厚い本、ピュアな男女が恋に落ちる甘く切ないハートフルロマンスだ。題材は、中世の魔法騎士物語であった。
 巷間(こうかん)で人気の女流作家が書いた最新刊で、侍女に教えてもらって読み始め夢中になったシリーズものである。私にこんな読書の趣味があると知ったら、お兄様も驚くだろう。
 驚くなかれ、私も同じように一途なラブストーリーを書いてみたいとも思っているのだ。勿論、ハッピーエンドで!
 私はページをめくりながら、飲み残しのハーブティを口に含んだ。ティーカップの縁が炎に照らされて柔らかく光る。ぬるくなっていたが、まだ仄かな香りが残っていた。
 ――なんだろう。この感じ。覚えがあるような……。
 ハーブティの味のことじゃなくて。さっきの夢の内容。この世界にパソコンがあったらよかったなあ、って久しぶりに考えたら、何かを思い出しそうになったわ。
 遠くの方で雷鳴が聞こえた。私はベッドの向こうの窓を見た。天蓋が邪魔をして良く見えないが音は聞こえる。
 ぽつぽつと、水滴が雨どいに落ちて跳ね返る音がしばらくしたかと思うと、そのリズムは徐々に速まり、しまいに豪雨となった。私は絶えず聞こえる一連の激しい雨音には耳を貸さず、愛すべき本を怒涛のように貪り読んでいたが、突然跳ね上がった。
 ――窓が開けっ放しだわ。
 このままにしておいては横殴りの雨が窓から降り注ぎ、ベッドが濡れてしまうことに気付いたのだ。
 ベッドに駆け寄り窓を閉じようとした瞬間、稲妻が走った。それは城内の庭園を囲むように植わっていたプラタナスの一本に落ちた。
 ――あれ?なんだか……見覚えがあるような、ないような……。
 すると、目の前が突然暗転し、私は無重力の闇に放り出されたみたいになった。

 カタカタカタ……
>不運なプラタナスは光の斧により真っ二つに裂かれ、

 カタカタカタ……
>凄まじい音を立てて倒れた。

「あれ?さっきの夢の続き?」私の呟きもこの無空間ではかき消されてしまう。

 カタカタカタ……
>光のエネルギーは熱へと変り、木は炎に巻かれ煙をあげた。

 カタカタカタ……
>豪雨によって火はまもなく消された。

 暗闇に浮かぶ人影が煙草をぷかぷかふかしながら、ふんぞり返って言う。
「私の描写ってなかなかいかすジャン。私って天才?」

「待って!あなた誰よ?待って……」

 カタカタカタ……
 だが、彼女の驚きはそれではなかった。姫は見てしまったのだ。

 私ははっとして、叫んだ。
「いけない!その先は……駄目よ!書いてはいけない!」

 カタカタカタ……カタカタカタ……
>稲光が窓に差し込んだ瞬間、彼女の部屋にあるはずも無いものの光と影が浮かび上がった。

 否。
 稲光が窓に差し込んだ瞬間、“私(オリビア)”の部屋にあるはずも無いものの光と影が浮かび上がった。私はそれと目が合った。
「何が駄目なのだ?」
 部屋の奥に窓際を向いた峻厳な横顔の凹凸が、それを見て私が
 ――彫刻?
と、思う間もなく、私の方を向いて喋ったのだ。圧巻の迫力である。
「何を書いてはいけないのか?」
 この時すっかり思い出した。プラタナスの倒木の既視感(デジャヴ)は現実に起きた出来事ではなく、己が前世で書いた文章だったのだということを。
 そして、今の私が生きる世界は、前世の私が書いていた小説の世界に非常に酷似していることを。
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