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転生王女と赤い薔薇

+11+ 誘拐犯との邂逅

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 男との対峙が五分にも十分にも感じて、私の喉は干からびて、ものも言えなくなっていた。
 私は、気持ちを落ち着かせようと掌を握り締め、ベッドから静かに机のそばに戻った。男の姿をはっきり見ようと、机上のランプを恐る恐る前方へかざした。
 長身の男は腕を組み、壁に立てかけられたキャンバスのように背の一点をつけて、私をじっと観察しているようだったわ。窓から吹き付ける雨で体はびしょ濡れ。長い髪からぽたぽたと水滴が落ち、絨毯を濡らしている。雷光に照らされた髪は、思った通り、いや思った以上に赤かった。赤いペンキを頭からぶっかぶったようなー、ってたとえが悪いわね。先ほどの私の発言が気にかかるのか、胡散臭そうに眇(すが)めた目でこちらを見ている。
「あんたが、オリビアか?」男は口隠しを剥いだ。
「え……ええ……」
 赤髪の男は私の体を舐めるように見回したので、怖気(おぞけ)がしたわ。いくら絵に描いたような野性的イケメンでも、マナーってもんがあるでしょう。発情期の獣と一緒で野蛮極まりないわ。
 ところで、私にはこの“正体不明”の男の正体がわかっているんだけど、今言ってもいいものかしら。さっき気が付いたとおり、この世界が前世の私の構築物だとしたら、こうしてペルセウスの姫君の部屋に侵入するのは世界に一人彼だけだ。でも、名前を言い当てちゃったら、余計に不審に思うだろうし……。
 悩んだ挙句、私は勇気を振り絞って訊いてみることにした。
「用件はわかっていますわ。私の話を聞いて?あなたは****でしょう?」
「は?」男は近づきかけた足を止めた。
「だから、****という名前でしょう?」
「いや……俺はそんな名前じゃない」私の決めつけに明らかに戸惑っている。
「じゃ……誰?」私のあほ面に男は顔をしかめた。
「俺の名前など、どうでもいい。オリビア姫、あんたを攫(さら)いに来た」
 名前は違うみたいだけれど、とりあえずここに来た目的は、思った通りだったわ!
 ――って、私これから誘拐されちゃうんですか?
「おとなしく付いて来れば、悪いようにしない」
 ここで乱暴狼藉する小説と勝手が違うので、私は茫然と彼の顔を穴のあくほど見つめた。
「私、あなたとどこかでお会いしましたか?街中とか、港とか、屋根の上でとかで?」
 この問いかけは、前世の小説を読まなければ到底理解不能だ。なぜなら、誘拐犯の男は街中に繰り出す姫の姿に恋をし、暴挙に出たというわけだから。
「それは、人違いじゃないのか?」男はため息をついて、淡々と答える。
「う……人違いデスカ……」
「とにかく、時間を稼ごうとしても無駄だ。助けは来ない」
 それはわかっているのだけれど。男の目が冷たい。エドガーお兄様が呆れたときに見せる冷たい目がましに思えるくらい、他人行儀で素っ気ない。
 なんだか小説と勝手が違う気がする。たしか、前世で私が書いた話では、抵抗する姫を羽交い絞めにして、激しい接吻と鳩尾(みぞおち)への一撃で気絶させたはず。考えただけでも悍(おぞ)ましく、お腹をさすりたくなる。
 痛い思いはしたくないけれど、ただ何となく物足りない。ロマンスのロの字も見当たらない。まあ、いくらイケメンでも知らない人とはキスしたくないし。私は残念そうに俯いて、それから窓の外でしとど降る雨を見やって言った。
「雨、止みそうにありませんね。傘を持っていますか?」
 私の問いかけに男は目を丸くする。そんなもの、持っているはずなかろうと身軽な装備を見せ、腕を組んだ。
「ちょっと荷物をまとめますので、待っていてくださいますか?」
「ああ。物わかりがよいんだな」
 男は胸ポケットから懐中時計を取り出して、三分待ってやると言った。どこぞの特撮ヒーローじゃなしに、そんなすぐに準備ができますかってんですわ。私はカップラーメンじゃないんです。カップラーメンの三分は長く感じるけどね。
 私がボストンバッグに衣装を畳み込むのを男はいらいらと待っている。
「そんなにたくさん持っていけないぞ」
「え?でも長旅になるんでございましょう?私、毎日同じドレスは嫌でございます」
「わかった。早くしてくれ」
 私は絢爛なドレスを二、三着詰め込み、宝石箱から宝飾品をごっそりと鞄にあけた。
「そんなに持っていくのか……」男は度々ため息をつく。
「ええ。何かあった時にこれを売って、生活の足しにします」
 それから、私は衣装箪笥からローブを取り出すと、衝立(ついたて)の陰に隠れた。
「おい。どこへ行く」
 私はネグリジェを脱ぎ去り、それを頭からかぶった。ミスリル糸で織られた玉虫色のマジックローブは、王家御用達の超高級服飾店に特注で作らせたものだ。物理攻撃の回避率を大幅に上げ、魔法攻撃を無効化するというチートなローブである。
 私がローブの襟元のひもを締め、魔石のボタンを留めて顔を上げますと、目の前に男が立っているではないか。
「ちょ……ちょっと!何見てるのよ!変態!!」
 私は恥ずかしさと怒りにまかせ、傍らのクッションをいくつか男に投げつけた。
「この貧……」
 ボスッ
 顔面に直撃!みなまでいうな。わかったから。
 たった今まで、静かにロマンス小説を読みふけっていた清廉潔白で純白な乙女には、残酷すぎる言葉だわ。刺し違えてもいい。いつか、この男を殺してやりたい。
 これが、赤い瞳を持つ赤毛の男との出会いだった。
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