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転生王女と赤い薔薇

+14+ 復讐の手段

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 国王エドガーは、その報告を聞いてのけぞった。
 大きな欠伸を何度も噛み殺した朝の謁見から、半時と経っていない。
 またしても、妹が行方不明だという。いつもなら残してある、暗号めいたメッセージもなく。そして、その事実とほぼ同時に、尖塔の衛兵と裏門の番人が気絶させられていたと聞かされて、彼は目を見開いたまま気を失いそうになった。
 魔法戦士隊の副長で近衛兵第二師団長であるケイプは、エドガーに召喚されてすぐに駆けつけた。
「夜明け前、一艘の船が出港したそうです」
 彼は挨拶もなくいきなり跪いて低頭し、開口一番に申し上げた。
「その船が姫をさらったというのか?」
 王は、椅子に腰掛け直し威厳を保とうとした。が、露骨な所作に見せかけとすぐにわかった。膝に乗せた両の拳がぶるぶる震えている。
「昨夕、ヘレシー達が、変装した王女を襲撃しようとしたことを考えれば、そう推測せざるを得ないでしょう」
 ケイプは姫を警護できなかった自分をふがいなく思い、再び顔を伏せた。
「だが、夜のうちに城に忍び込めるならば、ロバの群れを襲撃する必要など」
 王は言いかけて気付いた。ケイプは、変化の激しい王の顔色を窺いながら、言葉を繋いだ。
「姫の侍女ライタが、埠頭の倉庫で気を失っていたのを保護されました。彼女は、姫のご帰還時、すでに姿を確認されていなかったとのことです」
「どうして、そんな大切なことを今になって言うのだ。遅すぎる。事が起こってからでは意味がないではないか」
 王は声を張り上げ、部屋中に響き渡る怒鳴り声でまくし立てた。彼の激怒はしばらく誰にも収めることはできなかった。
 決して、賊の計画が用意周到だったためではない。警備が薄すぎたのだ。それは、我々の怠慢だった。だが、今更悔やんでも、姫は帰ってこない。跪いているケイプは、顎から汗が滝のように滴り落ちているのを感じた。
「で、船はどこに行ったのだ?」
「奴らのものと思われる船が数艘、時を同じくして一斉にポリスフォートの沖やサウスマーケットから去っていった模様。ドラコ大陸東の海に集まっているのを目撃した漁船があります。おそらく、ヘレシーベイスンに戻るつもりでしょう。……ただ今、トランスキ隊長に連絡を取りにいっています」
 ケイプはそのことを伝えるので精一杯だった。シルバー・トランスキ魔法戦士隊長は、故郷のブレイブタウンで休養中だ。いろんな意味で癖が強く近寄りがたい男だが、彼がいれば心強い。魔法能力はエリート中のエリートだし、それに何よりも姫の求婚者の中で隣国王子の次に有力な候補でもあるのだから。
 一方でエドガーは、妹の身を案じた。オリビアがその愛らしさゆえに誘拐されたとすれば、いやそれが理由でなくとも、命まで奪うような馬鹿な輩はいないとは思う。
 しかしながら、その美しさゆえに、彼女の意に反して、抵抗もむなしく大切な貞操が奪われてしまう危険はありすぎるほどだ。まして、あの化け物たちは性質(たち)が悪い。私が妹を愛していると知って、長きに亘る迫害の復讐に使うかも知れぬ。妹の身体を凌辱した上、我々が思いつかないほど残虐なやり方で殺すかもしれない。と、親馬鹿な兄は考えた。
「復讐か……」
 エドガーのその言葉を聞いて、ケイプは飛び上がるほど慄いた。
 つい一ヶ月ほど前、取り逃がしてしまったヘレシーの首領は、彼の上司シルバー・トランスキと自警団長ヴァレルの手で魔毒鞭(ポイズンウィップ)による酷い辱めを与えられていたことを思い出したからだ。レッドローズの背中に負わせた深い傷と流した多量の血は、致命的だった。脱獄しても傷の呪いが命を削りいずれ死ぬ、とシルバーは高をくくっていた。勿論ケイプ自身も。
 レッドローズと間違えて捕らえた男を身代りに絞首刑に処した時、奴も今頃死んでいるはずだと皆で思い込んだ。安心するために。
 だが、彼は生きていた。生きて戻り、姫を攫った。もし、このことで彼が復讐するとしたら、果たして姫が無事ですむのだろうか。残忍な拷問について王は何も知らない。
 ケイプは、ついにそのことをエドガーに話すことができなかった。

◇◇◇◇

「レッドローズ。お具合が悪いのですか?」
蛇輪を握る男の顔は険しい。顔は青ざめ、身体から滲み出した汗が滝のように流れている。暴風雨は静まったから、彼の身体が濡れているのは雨のせいではあるまい。
「先ほど着替えをされましたか?」
「いいや」
「風邪を引いてしまいます」
「そうだな……」船長レッドローズは、だからどうということもなく頷いた。
 船長に話しかけた赤い髪の少年――この船のクルーは皆一様に髪が赤く、区別がつきにくいが――は、ランウェルという名前だった。シャインよりは背が高く、もう大人の一員と言ってもよい年ごろだろう。
彼は船長室からタオルと着替えのシャツとチノパンを急いで持ってきた。レッドローズは気分悪そうに、近くの手すりにもたれていた。
「お疲れでしたら我々が代わりますから、休んでください」
「嵐の海に出なければならなかったのは、俺のせいだ。この激しい波浪が収まるまでは操縦する」
 船長は、甲板上で濡れたシャツとズボンを脱ぎ捨てた。胴体に包帯が幾重にも巻かれていて、それも湿っているのがわかる。タオルで汗を拭っていると、少年は続けて言った。
「包帯を取り替えましょう。濡れていては悪化します」
 レッドローズは何も答えずにズボンを履くと、蛇輪を握って息を吸い込んだ。海図とコンパスを照らし合わせながら、意気揚々と鼻歌を歌っている。素振りだけと知っているランウェルはため息をつくと、濡れた衣服を拾い上げて船内に下りていった。
 洗濯桶に衣服を積み上げて、ランウェルは考えていた。我々ヘレシーの切り札といえる人質を船長がかどわかしてきたことを。彼女は、絶望の民ヘレシーの救い主となりえるのだろうか。
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