スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←+18+ 餌付けされた王女 →+20+ さよなら長い友達
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 活動報告
  • 【+18+ 餌付けされた王女】へ
  • 【+20+ さよなら長い友達】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

転生王女と赤い薔薇

+19+ 下船に伴い

 ←+18+ 餌付けされた王女 →+20+ さよなら長い友達
 私は、約一か月ぶりにお日様の光を浴びた。
 甲板に出る前に、廊下の鏡を見たのだけど、顔は青白いし、目の下には太いクマが出来ていて、幽閉中のマリー・アントワネットかしら、と思ったわけだ。そんな顔だから、人前に出るのが恥ずかしかったのだけれど、でもようやく外に出られるという喜びが打ち勝った。太極拳とインナーマッスルの鍛錬のおかげで、私の体はそれなりに健康だったし、何より傍にサイザールがついてくれていたことが嬉しかった。
 彼の腕につかまって外界への扉を開けると、光の眩しさとともに素晴らしい景色が目に飛び込んできた。
「わあ!セピア湖ね。大きな滝!エンジェルフォールみたい」
 大きくせり出した崖のような山から、幾筋もの水が流れ落ちている。
「ラナック大滝。あまりの落差に流れ出た水は、途中で水しぶきと消えてしまう、滝壺のない不思議な滝です」
 滝壺がないとはいえ、滝の下を通過するときは大いに濡れてしまったわ。それでも、サイザールと笑いあった。何がおかしいかよくわからないけれど、彼となら楽しいもの。
 滝の中には洞窟が広がり、奥に進んでゆくと船着場があった。壁面に並ぶ松明に火が点けられて、到着を待っていた男たちがわらわらと船に駆け寄ってくる。クルーは舷側を岸に着け、梯子をかけた。そして、今回の略奪で勝ち取った戦利品を陸に下ろし、洞窟の奥の通路へと運んで行った。全てが手際よく、見ているこちらも小気味よい。
「あんた、嬉しそうだな」後ろから声をかけるものがいる。
 振り返ると、そこには図体の大きな男がいた。ローガンだわ。彼は寡黙で努力家ではあるけれど、小説ではイケメンたちの引き立て役のような存在で、出番が少なく姫との接点もない。ああ、そうそう、ヒロインをお荷物扱いしたくらいかしら。
「ここにあるのは、人間からの略奪品だ。殺しで奪ったやつもある。それを見て笑っていられるとは、暢気(のんき)な嬢さんだ」
 カチン。なんですって?
「まあ!私は別に積み荷を見て、笑ったのではなくてよ」と、続きをまくしたてようとすると、サイザールが私の手を引いた。
「気にしないで。彼、毒男だから。若い女性の美しさに嫉妬しているんだよ」
「そ……そうかしら」
「オリビア。君はぷんぷんしているのも魅力的だけど、笑顔の方がもっと素敵だよ」
 うわ、くっさ。サイザールがいい人なのはわかっているんだけど、ここまでくると、台詞の途中で歯が浮いたりしないかしら?きっと、彼の奥歯はガタガタね。でも、こういうシチュエーションが、現実には滅多に起こりえないために、少し嬉しかったりもする。
「あ……ありがと」私は少女漫画のように頬に斜線をひいて赤面した。
 サイザールの手に引かれながら、タラップを降りていると、後ろから強く押すものがあった。
「おい、人質。どけよ」バカスクイナフである。
「スクイナフ。危ないじゃないか」サイザールが注意してくれるんだけど、聞く耳を持たない。足元が暗いんだから、ゆっくり降りないと踏み外してしまうわ。
「へらへらしてんじゃねーぞ。このメス猫が。言っとくがな、ベイスンに人間はいねえ。あんたに味方はいねえんだ!俺たちに爪を立てたら、ただじゃすまねえからな」
 捨て台詞を吐いて去るスクイナフに、心の底からあっかんべーをしてやる私。ふん。爪を研いで待っていますとも、あんたとあの卑劣なレッドローズの首を掻っ切るためにね。
「なんて顔をしているんだ」今度は何?次から次へと私に声をかけてくるなっていうの。
 松明の炎に照らされた男の顔を見るんだけど、ぼんやりしてわからない。私、視力下がった?前世は乱視入りド近眼の、ビン底メガネザルだったわけだが、それに近い。けど、さっきの景色はよく見えたしなあ。
「苦虫を噛み潰したような顔をして……」男が近づいてきてようやくわかった。
ゲゲゲ。レッドローズじゃん。久々過ぎて、顔も忘れていたけど、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)してきたから憎しみだけは根付いている。憎悪こそ、私のたった一つの煩悩よ。
「雀百まで踊り忘れず、とは言うものだ。牢屋で矯正できると思ったが、腐った性根だけは治せなかったか」
 ちょっと待って。私がいつそこまでけなされるほどひどいことした?あんたにそこまで言われる筋合いはない。怒りで拳が震えている。
「まあまあ。レッドローズ。言い過ぎだよ。彼女、あんたに何かした?」
「はっ。サイザール。人間の肩を持つのか?」船長は吐き捨てるように言った。
「そういうわけじゃないさ。人間でも、彼女は女の子だぜ?女とつくものには無条件に親切にしなくちゃいけないものだろ?」
 うーん。サイザールはそういう男なのか。イボイノシシやアメリカバイソンのメスにも優しくしそうな勢いだ。なんだかなあ、と少しがっかりしながらも、彼の交渉いかんで、私の待遇が変わるかもしれないので、今はサイザールの肩を持っておこう。
「ふん。信用ならん」
「でも、ばあばの話を信じたんだろ?そしたら、彼女のことも信じてやらなきゃ」
「ばあばの話?」ほう、初耳だわ。小説とは違う展開に私は興味津々だったんだけど、
「首を突っ込まなくてよろしい。お前も女の前でその話はするな」と、船長は取り付く島もない。サイザールは私の肩を叩いて慰めてくれたわ。
関連記事
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 活動報告
  • 【+18+ 餌付けされた王女】へ
  • 【+20+ さよなら長い友達】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【+18+ 餌付けされた王女】へ
  • 【+20+ さよなら長い友達】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。