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転生王女と赤い薔薇

+23+ 赤薔薇の本名

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 ところでシンシャに聞いた話だと、クインズ副長は、屈強なローガンや“ショタ”シャイン、赤ひげゾーンらを連れて、再び海に出てしまったらしい。史上最悪級ろくでなしのレッドローズ船長と猪口才(ちょこざい)なランウェルはベイスンに残っているようだが、彼らもまた姿を見せない。
 前にも書いたように私が置かれた場所は、レッドローズの家だった。彼が自分の家を使うようにと指示したらしい。どうやら家の前に警護(番人)を二人付けたのも彼みたい。というのも、ドア越しに二人分の呼吸音を感知したから。海賊船長の彼はヘレシーという民族を良くも悪くも代表する広告塔のような存在であって、ベイスンにおいても発言力を有しているようね。
 だけど、その彼は今、どこにもいない。……死んでいたら、手間が省けて都合がいいのだけど。
 もう一か月近くこの家に監禁されているが、人質として誘拐された理由もはっきりと教えてもらっていないので、シンシャにはひどい扱いだと同情され慰められた。でも、彼女もどうしてことが進展しないのかは理解している様子で、――つまるところ、話し手(レッドローズ)の調子がすこぶる悪い、ということだろうが――、何だかんだ私を本当に気の毒に思ってくれる人はここにはいない。
 まあ、船底で味わった地獄のような牢獄生活に比べれば、放置されても別段苦とも思わないわ。

 暇なので、ヘレシーベイスンの話をしよう。
 ヘレシーたちの民家は、私の国ペルセウスの城下町とは何もかもが違っている。ヘレシーベイスンには大きくてなだらかな石灰岩の山がいくつかあり、集落を形成している。岩山には戸の付いた穴がまばらに点在していて、それぞれに掘削(くっさく)された地下空間が広がっている。それがヘレシーたちの住居なのである。いわゆる集合住宅なのだが、平成の庶民向けマンションよりは間取りが多く、一つ一つの部屋も広い。彼らはそこに家具を運び込んで暮らしていた。屋内は、夏は涼しく、冬は暖かい。高原のため冬の寒さは特に厳しいが、地上に通じた空気孔を暖炉に利用して、暖を取ることもできるそうだ。
 船長の家は、全室の壁において石灰岩が剥き出しになっている。しようと思えば、壁紙を貼って模様替えも出来るだろうケド、壁の色は明るい白に統一され、質感はなめらかでその必要はないわね。
 レッドローズの家には、寝室が三つに、キッチンとバス・トイレが一つずつあって、広いダイニングとリビングが隣り合っている。ダイニングには立派な長方形のテーブルと椅子が設(しつら)えられ、レース編みの白い敷布(しきふ)に、名も知れぬ美しい花を挿した花瓶がある。リビングには床にモスグリーンの柔らかいラグが、壁に数枚の静物画や風景画がある。本棚や戸棚、低めの円卓、座り心地の良い臙脂(えんじ)色のソファーがバランスよく配置されている。
 慎ましやかだが、家具や実用品の趣味は良く、居心地の良い空間だ。間取の中央には先達(せんだっ)ても述べた、素晴らしいサンルームがある。青みがかったガラス戸を開けて、私は室内へと戻った。まだ、お夕食には間があるわね。私の興味は、レッドローズの書斎に向けられる。
――ええ。鍵がかかっている、開かずの部屋ね。ここは書斎なの。
 小説の中では、魔法をうまくコントロールできないおポンチなヒロインが、ドアノブを消失させてしまう、というシーンがあった。
 ふん。私(オリビア)はそんなに愚かではないわ。こんな時、属性魔法を使うなんて、イカれているもの。まあ、多分解除魔法の何たるかすら知らなかったんでしょうけど、と私は鍵穴に指を当て、呪文を詠唱しようとしたが、ふとやめた。
 ――そうだわ。忘れていたわ。私ったら、どうして、あの牢屋に閉じ込められていた時にこれを使わなかったのかしら!私の方がバカね。
 深くため息をついて、さらに思考を巡らせる。
 ――考えてみたら、牢から出たところで、周りは海だもの。脱獄がばれて、また捕まっていたワ。それに、杖がないと魔法の成功率が低いし。ここは、杖が無ければ魔法は使えない、というのを演じていた方が無難(ぶなん)ね。よし、そうしよう。
 私は手をすぼめて、口笛を吹き誤魔化(ごまか)しながら、ソファーに深く座り込んだ。

 寛(くつろ)いでいるといきなり後ろから声をかけられ、オリビアは跳び上がった。ランウェルともう一人背の高いやせた男が立っていた。やっぱり赤髪赤目だったが、今まで見たことのある顔ではなかった。しかし、いつの間にこの家に来たというの?音も立てずに。
「書斎に入ろうとしたのに、入らなかったのはなぜですか?」
「何のこと?そしてまた、一体どこから入ってきたの?あなた方は」
「質問に質問で返すとは、いかにも人間らしい。まあいいでしょう。……私共ヘレシーの海賊は、人間の世で言うところの忍びの術を心得ておりますからね」
 銀縁の眼鏡をかけた賢(さか)しそうな男は、目を眇(すが)めて私を観察した。忍者相当の能力(アビリティ)があるらしいが、どこから侵入したかの質問の答えにはなってない。
「ほお。こちらが、オリビア・ロイヤル様ですか。へえ。へえ」
「……」
 彼はいろんな角度から私を値踏みして、13へえした後、ランウェルに囁いた。ランウェルは彼に一礼して、部屋を出る。二人っきりにしてほしいということなのだろうか?
「初めてお目にかかるはずですが、ご挨拶はされないのですか?」
「……私のことは知っているでしょう?名乗りたければ名乗れば?」私は冷めた目で、彼を見やった。しかし、彼はいじける様子もない
「では、お言葉に甘えて。私の名はジュナイ。グラナトの代わりに来ました」
「はい?」グラナトって誰?
「ですから、ジュナイと申します」
「そこじゃなくて……」そこは変わりないし、物語に影響ないからいいの。
「えっと……。私の名前は重要でないと?」
「うん。さっき言ったグラナトって誰?」
「……」彼は押し黙って、私の顔を見入った。
「何?」
「私の名前は重要でないと?」再び同じ問いかけがきました。面倒くさいデス。
「ああ、はいはい。重要。極めて重要。極秘扱いの重要度……で、グラナトは?」
「オリビア姫はご存じないのですか?」質問に質問で返すなよ。お前は人間か(笑)。
「ええ。ひょっとして、レッドローズのことかな?」
「ご名答です。レッドローズは、彼の二つ名なんです」
「へえ」この世界では、違う名前なんだ。なんでだろう。まあ、どうでもいいけど。
「って、あ、しまった。言っちゃった」ジュナイと申す男が慌てている。
「え。何?社外秘(しゃがいひ)だった?」
「そうですね。海賊の頭領の本名は明かしてはならないって掟があるんですよ。やばいなあ。部外者のあなたに打ち明けてしまいました。内緒にしといてもらえます?」
「知るか」私はぼそっと言ったわ。
「へ?」
「どうせ、全部演技でしょ?臭くてかないませんこと」最初から言うつもりだったんでしょ?この人が計算高いのは、前世からよおく知っているのだから。油断のならない人間です。
「ふうむ」彼は唸り声を上げた。
「あなたは思った以上に洞察力(どうさつりょく)のある方とお見受けしました。美しいだけでなく、なかなか感性の鋭い才媛(さいえん)ですな」ジュナイは眼鏡をやや持ち上げて感心したように言った。
「おだてても何も出ないわよ。とりあえず、あなたの役割について教えてちょうだい」私は褒め殺しにも動ぜず、彼の次の言葉を待った。
「役割?」
「そう。あなたがこれから何をするつもりなのかね。今まで来なかったのも、今来たのも、訳があるんでしょう。ジュナイさん」
 私は柔らかい笑みの下に、企みを潜(ひそ)ませて、彼に訊ねた。
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