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転生王女と赤い薔薇

+27+ 赤い四足獣

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 と、その話はひとまず置いておいて、私たちはようやく圃場(ほじょう)にたどり着いた。
 私は広がる景色の隅々まで両の目で堪能し、深い呼吸をした。人里離れた所だけあって、空気が澄んでいるのが、この村の良い所だ。ペルセウスなら今頃寒い冬のはずだが、こちらは太陽が真上にある。地球で言うところの緯度が低い所、もしくは南半球なのだろうか。ただ、高所なので気温はさほど高くはない。
「……」
「……」
「良い眺めね」
「って、やっぱりお嬢はおかしい」
 だから、お嬢ってなんだよ。と、突っ込みたくても顔には出さず、彼の前を二、三歩先に行く。
「ねえ。オリビア嬢、変に思うことないの?」
「変にって?」
「だって、あれ見てよ。たくさんの赤い点がうろうろしているでしょう?もしかして、目が悪い?僕の眼鏡貸そうか」
 そりゃあ、前世ではビン底メガネザルだったけど、今は常時両目1.5よ。後遺症の乱視と疲れ目もようやく治ってきたし。
「見えているわよ。赤い動物ね」
「だったら、なんで質問してくれないの?気にならない、お嬢?」
「じゃあ、あれはなに?」私は彼のしつこさに観念して訊いてみた。
「あれは、サトイモ畑です」目の前に広がる畑を手のひらで示しながら自慢げに言う。
「死ねよ」
 殴ってやろうかと思った時にはすでに平手打ちしてしまっていた。条件反射というやつだわ。スクイナフならプッツンしてバカ力に任せて私を絞めあげたかもしれないけれど、この男は軟弱者なので殴られてもへらへらしているだけだ。
「お嬢のタイミング、流石です」あんたはマゾか?笑顔を見せるジュナイが気味悪い。
「訊けって言ったから訊いたのに。もう二度と訊かないわ」
「そんなこと言わずに。人生にはウィットとユーモアが必要ですよ」
「あなたが言いたいことはわかったわ。でも、私にはスピードが必要なの。手早く説明してくれる?」そう、巻きでね。皆、退屈しちゃうから。
「そうですか。では、申しあげましょう。あれは……」
 ゴクリ
 ジュナイの生唾を飲む音が山の斜面にこだまする。大きい音だなあ。
「続きは次話に持ちこし」
「ふざけるな」
 再び私の張り手が、彼の頬にクリーンヒットする。よろめいて尻もちを搗くジュナイ。これだけされても、彼の顔に不快感は浮かんでこない。こんな反応を待っていましたとばかり、笑みを浮かべている。苦痛を味わうのがお好きなようだ。
「ふふふ。お嬢、もうちょっとあれに近づいてみませんか?」
 懲りない男だわ、と思いながらも私は従い、彼の後について畦畔(けいはん)を歩んだ。

 様々な作物が育てられている農園に、緩慢(かんまん)な動きの四足獣(しそくじゅう)が点在している。その動物は毛深くて赤い長い毛が地面まで垂れ下がっている。顔の場所や骨格なども判断がつかず、赤いモップのようにしか見えない。毛むくじゃらのイエティが赤い蛍光塗料を被って四つん這いになっているといえば伝わるだろうか。まあ、イエティだって見たことのある人はいないと思うけど。
「怖くないのですか?」ジュナイは私の顔をうかがうように訊いた。
「え」
「人間には見慣れない光景でしょうに。彼らが襲ってくるとは思わないのですか?」
「ヘレシー達が畑に放しているんでしょう?彼らは土を耕してくれているようね。悪いものではないわ」
「ほう。流石な洞察力。お嬢もなかなかやりますねえ。では、彼らが家畜ではなく、我々と同じヘレシーであると言ったらどうです。あれと僕が兄弟だとしたら」
 何も知らない人が聞いたらびっくりするかもしれないのだけれど、相手が悪かったわね。私は前世でこの世界を設定した原作者なのよ。神様といっていいのよ。目の前にしたのは初めてだけれども、この赤い動物たちが何者かを知っている私にとって何一つ吃驚(きっきょう)することはなかった。この赤モップたちはゼイガーと呼ばれ、ヘレシーの突然変異体なの。ああ、これもよくありそうな設定よね。ふぅ。満腹だわ。
「驚きのあまり、言葉も出ませんか」
 私が独白していると、ジュナイはさもあらんと得意げな顔をしたので、ため息が漏れた。
 ジュナイは私の手を引いて、畑に踏み入った。ゼイガーに近づき、そのなだらかな背中を撫ぜる。
「我々は彼らをゼイガーと呼んでいます。ヘレシーの中から生まれるものです。いわゆる、変異ですね。百年以上前から起こっている珍しくない変異で、ゼイガーはもはやこんなに数がいます。我々が生まれるのと同じ確率で、つまり五分五分でゼイガーが生まれるのです。彼らは生殖機能を有しませんが、我々より体が丈夫で寿命も長い。知能は冴えないので、農作業をさせているのです。家畜もいるにはいますが、田畑を耕すには人手が足りませんからね」
 私は口を挟むことなく、説明を聞いていた。サトイモ畑だけでなく、隣の畑にも、そして延々と続く畑の果てにまで、無数の赤い点が動いている。それらは、一見家畜のようにしか見えず、ジュナイたちと同じ種族だとは到底思えない、と読者なら思うだろう。私は念のため確認してみることにする。
「寿命ってどのくらい?」
「ゼイガーは平均で四十年。……我々はその半分を生きることさえ難しい」
 今更ながら思うが、一部ハードな設定に懲りすぎだろと、前世の自分に突っ込みを入れたい。いろいろと(小説とは)違う意味で私は息を止めた。
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