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転生王女と赤い薔薇

+28+ 八つ裂きにされろ

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 ジュナイと散策から帰ってくると、玄関の扉が少し開いていた。まさか、泥棒?と、前世の小市民的発想を振り払い、私はジュナイとともにずかずかと自邸(レッドローズの家)に踏み込んだ。外には見張りもいないし、怖いっちゃ怖いけど。何かあったら、このM男を盾にしようと心に決めた。
 リビングのソファーに男が座っていた。赤髪の。当然だけど。
 横顔からはわからなかったけど、正面からレッドローズと分かった。音がしても振り向くのが億劫なんだろう。そのくらい疲れ切った顔をしている。彼は私をすっと見上げた。
レ「……」
オ「……」
ジ「……」
 挨拶もなしかーい。

 部屋がうす暗いので、私は蝋燭に火をつけて持ってきた。ジュナイは船長に顔を近づけて何か話しているが、ふと笑みをこぼすと踵(きびす)を返し、手を振りながら出ていこうとした。
――ま……待て、こら待てーい!!(某刑事声)
 私を一人にしないでー。ひっぱたいたのは謝るから、レッドローズと二人きりにしないで、と涙目。だけど、考えたら小説でも船長と姫が二人で語らうシーンがあるのだった。通称、船長と王女の愛の個別指導。しかも、夜更けに船長がサンルームから忍び込むという夜這い仕様。それに比べたら、時間も侵入経路も常識的ではあるけど。そして、この展開を私も待っていたはずなのだ。けれど、心の準備もなく対峙(たいじ)してしまうと、やたらと汗を握ってしまう。
 私は対面のソファーに斜め掛けして、彼を冷ややかに見た。私をだまして誘拐し、牢獄に押し込めたこと、そのせいで極度のストレスを与えられ白髪(はくはつ!)になったこと。テレポートの時には屠殺(とさつ)寸前の鶏のように首を絞められ辱めを受けたこと。何より、誘拐にあたって私の着替えを覗き、「貧……」と無礼な発言をしたこと。失敬極まりないわ!許すまじ、レッドローズ。

「お茶は出ないのか?」
 二人の沈黙を破ったのは、レッドローズだった。
「おちゃ?」
「それぐらい出して良かろう。折角、客人(きゃくじん)が来たのだから」
「客人って。あなたの家でしょ」
「まあ、そうだが」
 わかりましたわ。今は午後三時だし、おやつの時間。ちょうど私も飲みたかったところだから、ついでにあんたの分も作ってあげましょう。王女の私が作るお茶を。最近、シンシアに教えてもらって、お茶の美味しい入れ方がわかるようになったことだし……。
 と、席を立とうとしたら、
「いや。やっぱりいい。毒を盛られたら大変だからな」
 なにそれ。言うに事欠いてこの言い草。ひどくない?この私の体のどこに毒を隠し持っているというのよ。くノ一とか女アサシンじゃないんだからさー。毒を隠すような胸の谷間もないというのに。私はあからさまにむすっとした。
 すると、
「……その服、お前にあっていると思うよ」謝るでもなく、話を変えてきやがりました。それに、お前って呼ぶな。
 誘拐時に用意した旅行かばんは奪われて久しく、私が着ているのはヘレシーベイスンの村娘たちのおさがりである。半袖のパフスリーブに膝丈まであるフリルペチコート(ドレス)の色は地味なベージュ。胸元のバター色のストマッカーには、小振りなレースが縫い付けられ、皮ひもが幾重にも交差している。ウエストは深緑の太い撚糸でくびれを強調できるようになっているが、私には無意味だ。胸の部分に入れ物(パッド)をしているくらいなのだから。
「その偽(にせ)……」
「言うなあああああ!」
「!!」
 レッドローズはびっくりして目を見開いて、私を凝視した。
「はっ。ごめんなさい」
 でも、偽(にせ)って何よ。偽(にせ)って。私の胸見てたし、絶対にけなしにかかっていたわ。最低最悪の男……はあはあ。
「……すまん」船長は気まずそうに俯き、手を組み替えた。

「あんたには悪かったって思っている……」
「なんのこと……?」
 また、いきなり切り出してきやがった。胸のことじゃないだろうな?私は警戒丸出しで、彼の言葉に耳を傾けた。
「一か月も船底に押し込めて、出てきたときお前の髪が真っ白になってしまっていたことだ。この地に着いて気づいた時、俺は」
「……俺は?」
「とんでもないことをしてしまったと思ったよ」
 憐みのこもった顔で私を見てきた。ふん。少しは反省しているみたいじゃない。同情されるのは好きではないけど、自分が悪いことをしたと自覚しているのなら、五体投地(ごたいとうち)土下座で許してあげてもいい。私ってなんて寛大なお姫様なんだろう。
「お願いだ。許してくれ。いや、許さなくてもいいが、許したという言葉を、あいつに……シンシアに聞かせてやってくれ」
「はい?」
 私はレッドローズの顔を呆然と覗き込んだ。
「あいつに殺される」
「はあ?」
 目から鱗である。え?シンシアに?それは、どういう……。
「だから、お前への惨たらしい仕打ちと、女の命である髪を台無しにしたという罪で、シンシアに裁かれるかもしれないのだ」
「へえ」そりゃもう、あきらめるしかないね(わら)
「なに笑っているのだ……」
「いや、笑ってないけど。仕方ないんじゃない?」笑っているのではなく呆れているのだ。
 ああもう。私が書いた小説の主人公ってこんなやつだったっけ?誰もいないところで小一時間ほど頭を抱え込みたいのだが。自分のしたことの責任くらいとれよ、男だろ?
「八つ裂きにされるかもしれないのだぞ?」
「されろ(棒)」
「な……」
 弱り切ったレッドローズの瞳にわずかに生じる怒りと悲しみの色。前世の小説では、ヒロインのおポンチ姫が船長の体調を気遣うというシーンがあるはずなのだが、私は今、こんなやつ八つ裂きにされて無事死んでしまえと思った。
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