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転生王女と赤い薔薇

+37+ 化け物たちの齢

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「ここからは私が話しましょう」
 年長者のジュナイは薄く笑って立ち上がると、キッチンに歩いていった。消えかかっていた蝋燭の炎を移すため、新たな蝋燭を持ってきたのだ。彼はそれに火を灯した。
「我が祖が亡くなってから、もう千年近く経ちました。奇跡的に私達は呪われた命のバトンを繋いできましたが、今度こそお終いです。それほど、深刻な問題が起こっているのです」
「深刻な問題?」
「ええ。ヘレシー間には、もともと多くの奇形が生まれておりました。その奇形種のほとんどは生後まもなく死んでしまい、出生数にも含まれません。しかし今、健康体であるはずの我々の体が弱体化していることに加え、半分近い高確率でゼイガーという変異種が生まれてしまう現象が起こっています。変異種ゼイガーは筋肉質ですが、前頭葉の発達が悪く、従順で扱い易い家畜のような存在です。お嬢が散歩の途中に畑で見た通り、彼らは農作業に従事しています。正常なヘレシー、いや正常というのはおかしな話ですけれども、我々ヘレシーは減り続け、ゼイガーは増えているのです」
「このままいくと、どうなるの?」
「近いうちに、ヘレシーもゼイガーもいなくなるでしょうね。このままだと、我々は間違いなく絶滅します」
 四人の間に流れていた空気が急に凍えて、氷点下になったように感じた。スクイナフがびくんと体を強張らせ、私を射抜くように見つめている。憎悪の念を感じるわ。一方のサイザールは私から顔を逸らして、花瓶からケイトウの花を抜いてじっと眺めているし、ジュナイは作ったような笑みを貼り付けたまま、機械的に話している。
 ああ、私がこの世界を作った原作者だと知れたら、間違いなく嬲(なぶ)り殺しにされそうだわ。ミラクルハードモードなんですもの。何とかしてあげたいけど、いくつか小説と異なる展開もあるし、あらすじを知っている私にとっても罠(トラップ)が仕掛けてあるから、慎重にいかないと。一体、この世界はどうなっているのよ。神がいると仮定したら、原作者の私が死んで、誰が駒を動かしているというのかしら。

「ゼイガーには生殖能力が無い。我々の寿命は短い……」
 長い沈黙の後、サイザールがため息をついて呟いた。そして、ようやく私に目を合わせてくれた。
「二十年も生きられないと、ジュナイに聞いたわ。それは本当?」
「二十年生きたら、天寿を全うしたと称えられるくらいだ。我々の命はそれほど儚い」
「お嬢。私達は何歳に見えます?」ジュナイは、リビングの壁沿いをくるくる回りながら質問した。
「人間で言えば、二十代前半から三十手前くらいかしら」体つきはね。ジュナイとスクイナフの精神年齢は見た目より一回り幼そうだけど。
「そうですね。しかし、我々の年の取り方は人間のそれとは違います。スクイナフ、君は何歳かね」
「俺は十一歳だ」
「スクイナフはサイザールより一つ年下です。ということは、彼は十二歳です」
「そう。船長と同い年……」
「で、私はグラナトの一つ上ですので、十三歳です。ビックリしましたか?」
 これには、事情を知っている私も驚きを隠せなかったわ。実年齢と外見があまりに違うのだもの。スクイナフが十一歳って、本来ならばシャインくらいの可愛い年頃じゃないの。それが、十六歳のお姉さまに向かって、バカだのクソアマだのウンコだの、生意気の度を超えていますわ。まあでも、見た目が、というか骨格がもう大人の体だしねえ。
 レッドローズなんて、海賊仕込みの浅黒い体で筋肉隆々。さっき見たときなんか病床で剃れなかったのか、頬髭が生えていたし、野性的な顔には日に焼けて出来た細かいしみと私には決して見せないだろう笑いジワがついている。二十代後半の肉体は、そのどこにも少年らしいあどけなさを残してはいない。
「私達の体は、度重なる近親相姦の末に異変をきたしております。奇形や変異体が生まれること然り、我々自体も一定の方向に退化してゆきました。つまり、生存し、生殖する能力のある我々ヘレシーがその機能を残しながら、といっても残念ながらその機能さえも減っていく運命にあるのですが、退化していくのです」
「近親姦による退化?」
「そうです。ゼイガーの誕生と我々の寿命の縮小。これが意味するところはなにか?二人の父娘から発し、他の誰とも混じることのなかった孤独な遺伝子は、性質を変え役割分担するよう分化したのではないかと、考える説が主流です。すなわち、思考力と生殖力は無いが労働には適していて永く生きられるゼイガーと、人間のように思考を持って生きられるが寿命が短いヘレシーとに、遺伝子が変異したのです。そして、寿命の縮まった我々は、繁殖期の繰り下げで成長が非常に早くなったというわけです」
「信じられないわ。あなたが十三歳で、レッドローズが十二歳?あの体で、あたしよりも四つも年下なの?」
 私は小説内のヒロインとはまた違う気持ちで、彼らの体をまじまじと見つめて、感嘆して言った。この時、前世の小説では、船長がヒロインと一対一で説明をしていて、ヒロインの同じような台詞に対し、船長は
>くっつくほどに彼女に顔を近づけて、大きな手で力強く彼女の細い手首を掴み、
>彼女は彼の熱い大きな手に握られて、思わず小さな悲鳴をあげる。
>「生まれてから十二年と言うだけだ。精神も、体と同じように早く成長する」
と怒ったように言うのだけど、今は布団の中。代わりに、スクイナフがチッと舌打ちをしたわ。そういう人間の驚嘆は今に始まったことじゃないみたい。それもそうよね。お隣にブレイブタウンというヘレシー生体の研究機関もあるわけだし、私も彼らにとって想像通りの反応をしただけ。
「船長と俺は、人間で言えば二十六、七くらいだろうね。仲間も皆すぐに成人になる。そりゃ人間達から見れば、化け物だろう」
 サイザールは、腕を組みながら少し唸るように言った。その手にはケイトウの花が握られている。
「これは君が挿したのかい?」
「そうよ。ジュナイと散歩していて、道端に咲いているそれに目が留まったの。あなた方の髪の毛のように美しかったものだから」私はすました顔をしてそう言ったわ。よく赤ペンキを被ったような髪って例えていたけれど、悪くない色だもの。
「ふん。ご機嫌取りか?命乞いか?俺たちがどれだけお前ら人間を憎悪しているかわかって、急に怖くなったか?」と、言いかけるスクイナフに手で静止するサイザール。私の顔を見入って言った。
「オリビア、君は花が好きなんだね。花畑には行った?」
「いいえ。あなたが連れて行ってくれるだろうと、ジュナイが」
 そばでうろうろしていたジュナイは、急に振り返って首を横にぶんぶん振った。いいから、ちょっと黙ってて。レッドローズと散策するよか、サイザールの方がましだもの。たとえ、女たらしでも彼は暴力を振るわないし。レッドローズとは何を話せばいいのかも、浮かばないわ。サイザールはにこりと笑った。
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