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滅びの王子アムンセル

7.中庭にて王妃の思惑

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 リィ・シュナ姫は、ファルクム王子とイエル・キリクに連れられて、王宮の中庭に足を踏み入れた。そこは周りを蘇鉄(そてつ)が等間隔に植えられ、広々とした芝生の真ん中に柵をこさえた小さな池があった。姫と同じくらいの年頃の男の子が二人、女の子が一人遊んでいる。
 ファルクムが言うのをイエルが翻訳して彼女に説明するには、茶髪のカールがかかった男の子がファルクムの末の息子で、そばで遊ぶ二人の男女は息子の友達にと連れてこられた貴族の子供達だった。そして、奥に設えられた肘掛椅子で三人を見守っている女性はファルクムの母で、クレオス王の正妃ヌミアであった。
 ヌミアはベージュの地味な色のドレスを着ていたが、胸元のストマッカーや袖の縁取りにたくさんの真珠が縫いつけられ贅沢な仕上がりになっているのがわかる。クレオスと結婚したのも四十年も前のこと、彼女ももう若くなかった。豪奢な装飾のネックレスがかかった首の皮膚はたるみ、目の下や口もとには化粧ではごまかせぬ皺があった。
「ああ、リィ・シュナ様ね。本当に可愛らしいこと」ヌミアは座ったまま、リィをこまねくと彼女の髪を優しく撫ぜた。緩やかなウェーブのかかった金色の髪に光が流れる。リィは青い瞳でヌミアを見上げた。
「年齢的にもグイドロワの妃(きさき)にこそ相応しいのに」
「いえいえ、母上。グイドはまだ子供ですし……」ファルクムは木馬の首を持って芝生を駆け回る幼い息子を見ながら言葉を返す。
「それならば、今年で十になるカンパネラの妃に。なぜ、“アムンセル”なのです」
 ――太陽のように眩しい笑みを満面に湛(たた)えた愛らしい姫が、なぜ、自分の孫ではなく、アムンセルに嫁ぐのか?ヌミアには疑問でならなかった。
 アムンセルは、自分の夫である王と卑しい身分の娘との間に出来た息子。しかも、よりによって“赤い髪の滅びの王子”と称されるおぞましい謂れの男である。姫には相応しくない相手だし、自分の孫達が選ばれなかったことが癪(しゃく)に障ることこの上ない。
「向うの王が望んだことです」
 それを聞いてヌミアはびくんと肩を震わせた。
「ラダトリアの……?」
 彼女はすぐに出てこない名前を思い出すために、記憶をゆっくりと辿(たど)った。
「もしや……あのカイザリスかい?」
「ええ」ファルクムは眉を顰(ひそ)めた。
「あははは。あの大うつけのご息女なのかい。この子は……」
 なるほど、なるほどと、笑いながら納得するヌミアの顔は、本当に王族の人間かと思うほど、みっともなく歪んだ。表情の豹変(ひょうへん)を子供ながらに察知したリィは、驚いてヌミアの膝から手を離した。
「それではクレオスも断われまいね。まぁ、これはこれで丸く収まるのかもしれないね」
 大団円ではないかと言わんばかりに口元を綻(ほころ)ばせるヌミアに、息子のファルクムは一抹の不安を覚えていた。二十年前のことは彼も覚えていた。あの時、ロアムに留学していたカイザリスがどんな目に遭い、どんな思いで帰国したか。父も母も理解しておいでだろうか。

 父王との話を終えた黒帽子のアムンセルが中庭に面した回廊を通りがかると、気付いたリィは駆けて行って彼の膝にしがみついた。驚くアムンセルに、リィの後ろからイエルが歩み寄る。
 中庭に立つ腹違いの兄と継母の姿が視界に入り、彼は少し懸念したが、リィの顔は明るかったので、何事もなかったのだろうと安心した。しかし、イエルは彼の肩元でぼそっと囁(ささや)いた。
「王后(おうごう)様がわが国の王を『ロアムの歴史に残る大うつけ者』とおっしゃっていましたよ」
 ヌミア様が姫様に向かって、言葉がわからないだろうと思って言ったのでしょう。勿論、姫様にはそんなことは通訳いたしませんけどね、とアムンセルを睨(ね)めつけながら彼は言った。義母は、通訳者がそばにいることを知っていながら罵ったに違いない。国際問題に発展しかねない一大事である。そばにいたのが事を荒立てるのを厭(いと)うイエルで良かった
「本当に申し訳ない……」大きなため息をついて、アムンセルは謝った。
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